VISION
七尾きよし

遠い遠い昔
シーラという女の子がいた
首飾り細工師の娘として生れたけども
故あって神につかえる巫女としてその一生を終えたシーラ

ヤサクという若者がいた
ある夜、炎を囲んで行われる戦士となるための入門儀式で
彼は雷に打たれながらも戦士の歌を歌い続けた
部族に伝わる伝説を受け継ぐ長老はヤサクに勇者の称号を与え
彼は西方の荒野へと約束の地を求めて旅立った
そして決して戻ることはなかった

シーラとヤサク
決して切り離すことができないほど固い絆で結ばれた二人の魂
けれども二人の人生は決してつながることはなかった
荒野の彼方へとやっとのことでたどり着いた年老いたヤサク
見たことも無いような美しい花々と果物に満ち溢れた密林の地で
彼は無邪気さと美の女神の大胆さを兼ね備えた異国の女と出会う
彼女の名は・・・・・

ロウソクを囲み二人の美しい人たちと瞑想をしていた
意識朦朧としながら目をつぶった暗闇の中に突然
彼女を見た。シーラ・・・
彼女の二つの目がボクをとらえて離さない
何年ぶりだろう。シーラ・・・・・・
いつの間にか君のことを忘れてしまっていた
大切な
ボクの苦しみをその身で生きてくれているあなたを・・・

季節はもう秋
でもそれは
夏がその最後の美しさをボクに見せてくれた瞬間だった
秋の中に流れ込んだ一筋の夏
どこまでもどこまでも細く細く流れ込んでいく
かすれて消えてしまう前に新しい夏がくることを知っているかのごとく
シーラの物語がボクのアストラル体を覆う



自由詩 VISION Copyright 七尾きよし 2006-02-07 01:52:13
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