朝夕のあんず色
田島オスカー


ひとつだけ思いがぶり返す
すべては 沈みたいがために
あの人はいつも 優しくている
それが痛々しいとは 知りたくないようだ

置いたままにしたスミノフの瓶が
ひとりでに倒れるのを 
あたしはもう二時間も待っている
自由に生きていけるのはきっと神様だけで
人は誰も縛られている
気付いてしまったあたしは
もうなにものにも きっと勝てなかった

ポールの苺ジャムが
瓶ぞこで朝焼けにきらめいている
小さくなってそこにもぐれば
甘く淡く 眠っていられるかしら


スミノフもジャムも
あたしを沈めてはくれない
割れてゆく爪が哀しくなくなってから
きっとあたしは
夕焼けの中にだけ生きている
 


自由詩 朝夕のあんず色 Copyright 田島オスカー 2006-01-29 00:57:49
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