振り子の爪あと
田島オスカー



大好きな夢を最近見なくなってしまって
哀しくなっているところに
隣の部屋から汚いビブラートが響いてきた
あたしは焼酎に負けて泣いている

どうしてもあの夢が見たくて
毛布の中で拝むように手を組む
煙たい手のひらが恨めしくて
酒にほてったほほが少しも可愛くなくて
あたしは三つ編みのまま泣いている

大好きな声が聞こえなくなって
眠れないでいるところに
指先から煙草が転げ落ちる
焦げてしまったのは情報誌
泣き出しそうな自分ではなくて
あたしはそれが哀しくて泣いている


結局泣いてしまうあたしは
何ものにもかえがたいと思ってしまう
そういうものをすべて爪先で転がしてきた
罰を与えるのは今も昔も神様だけれど
ばちに当たるのはあたし自身だから

欠けた月の端のほうで
一生眠って暮らしていれば
きっと素敵な夢だけを見ていられる

泣かないことが素敵だとは
思わないけれども

 


自由詩 振り子の爪あと Copyright 田島オスカー 2006-01-24 03:31:23
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