ひらひらの夢
田島オスカー


肺を
丁寧に手のひらにのせて見せたら
真っ黒だね、といってあなたは笑って
そういう汚さを
きっと誰もが持っている
そういう顔をしてくれた

泣きつつある
そういうのはいつもあなたが先だった
哀しいことはひとつもなかったけれども

ねえ、蛍光灯が切れるかもしれないよ、
そういって泣いたあなたに
僕はうつむいてしまった
嘘がはっきり光っていて大好きだったのに、
消えてしまうかもしれない、
そうだったね あなたは嘘が大好きだった

太ももから震えがきて
そうするとふっと明かりが消えた
あなたは泣きやんで
やっぱり嘘だった、嘘だったね、
笑った


川べりを歩いていると
あの時の嘘が葦の先に羽を休める

あたし生まれ変わったらちょうちょうになるわ、
飛び切り大きな、アゲハ模様、
そうすればあたしを見てくれるでしょう、
ずっとずっと嘘ばかりでも、あたしを、

あなたはきっと嘘のない世界で
いまでは散った花びらでいるでしょう

 


自由詩 ひらひらの夢 Copyright 田島オスカー 2006-02-21 00:53:42
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