白百合の犬
田島オスカー


夜の冷えにおそわれるのは私だけだと そう思っていたかったの
だからこそ私は 爪さえ切らずにいたのに


犬が私を笑っている 
座り込んだのは星が見えないせいなのに

いつもうまくいかないんですね。

そう言って 犬が 嗤う

何処までも続く闇があると信じているなんて。
早く気付いてしまいなさいよ。

そう言って 今度は 泣く


生臭い子供の笑い声が 遠くでもやになってゆく
私もかつてはそうだったとは 思わせないほどのかすかな詭道で

生臭いと思ってしまううちは きっと星など見えないですよ。

犬が


あの白いもやの 淡い香りを知りたいなら 僕と一緒にいらっしゃい。

指先が
百合色の犬の尾に ゆっくりゆっくり とけこんでゆく


 


自由詩 白百合の犬 Copyright 田島オスカー 2005-12-27 01:48:58
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