逃亡
チアーヌ

上流から下流へ流れる川を工事して
上流に変な生け簀を作ったらしい
わたしが見物に行くとそこには気味の悪い色をした鯰が
腹を見せたりしながら泳いでいる
流れるプールにしか見えないけれど
そこはアスファルト道路に面しているから
とても人工的
向かい側は住宅地
それなのにその狭い4メートル道路に打ち上げられたらしい
気味の悪い鯰が
ああでもその鯰には腕や足がついていて
おたまじゃくしが巨大になったもののようにも見えて
そこを4WDのでかい車が通ろうとして
頭を潰す
血は出るが死んではいない
腕や足でこちらに向かって来ようとするから
わたしは必死で逃げて
追いつかれないよう
追いつかれないよう
でも足は鉛のよう
ぬめぬめした巨大な手足のある鯰は頭から血を流しながら
腹を見せると気味の悪いぽっかりとした口をあけて
そこには小さな歯が数え切れないほど生えて
なんでこんなに歯って気持ち悪いんだろう
来ないで
来ないで
そこに外国人の少年が通りかかる
けれど言葉が通じないから助けを呼べない
わたしは曲がり角までなんとか逃げようとする
そこを曲がれば懐かしい家がある



自由詩 逃亡 Copyright チアーヌ 2005-08-06 15:14:15
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