奇妙な果実
恋月 ぴの

僕が
奇妙な果実になったなら
マングローブの木にぶら下がり
絶え間なく聞こえくる
極楽鳥の求愛の詩
蒸し暑いのは
僕達の想い
秘密の遊戯に耽っては
むやみやたらに書き記す
ミナミトビハゼへの往復書簡
歪の字に伸びた遠心力
白い錠剤
カリカリと噛み砕き
ぶらりぶらりと風任せ
日がな一日空をながめ暮らす
熱帯特有のスコール
土砂降りの雨粒が
コツコツと
僕の体をノックする
やがて雨上がりの森に
フルーツバットの群れ顕れ
地上すれすれに飛び交っては
奇妙な果実の果肉を啄む
啄まれた果肉の奥から
白い体液滲み出し
幻覚に痺れた揚羽蝶の蛹
愛し合う極楽鳥の夢を歌う


自由詩 奇妙な果実 Copyright 恋月 ぴの 2005-07-13 16:45:20
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