詩を書く理由(わけ)
恋月 ぴの

恋に目覚めたとき
君は書くだろう
恋に焦がれた
男の詩を

愛に恵まれているなら
君は書くだろう
優しさ満ちた
日々の詩を

性に欲望したとき
君は書くだろう
交尾に狂う
獣の詩を

信仰に救いを求めるなら
君は書くだろう
神に感謝する
祝福の詩を

怒りを覚えたとき
君は書くだろう
怨念に満ちた
暗黒の詩を

死に直面したなら
君は書くのか
絶望の詩を
それとも
生ることの大切さ
を問う詩を

大切なこと
自らの思考を貫くのか
それとも
授かったこの生
をまっとうするのか
君は何れを
選択するのか

それぞれの立場
それぞれの想い
をのせて書いた詩は
私的な在り様から
遊離し
それ自体が
思考する存在
として
君と対峙する

詩を書くのか
詩に書かされたのか
連綿と紡ぐ
言葉のあやに
理由がある必要は無く
書き連ねた
言葉のひとつ
ひとつ
にわかに際立って
縁取り鮮明に
覚醒の揺籃
ひと漕ぎすれば
一艘の小舟
川面滑らかに
船出の時を迎える


自由詩 詩を書く理由(わけ) Copyright 恋月 ぴの 2005-07-14 07:49:34
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