冬を寄せる
竹節一二三

あなたに手紙をかいた
ながいながいマフラーに
愛情だの執念だの絶望だの
うらみごとを鈎針でえんえんと
かきつづけた

読み返そうと
手繰り寄せたマフラーの編み始めに
秋が見える

ゆるやかに空がたかく
ひえはじめる風と
それに揺れるかさかさの木の葉
街は長袖でいっぱいになる
梨の甘さ
夏よりも淡くひかる電灯
近くの小学校から聞こえる歓声
冬を寄せる冷たい雨

鳥がいなくなる
虫の声が聞こえなくなる
葉の数が少なくなる
夜の音が鮮明になる
灯油を売る車が来る
息が白くなる
手足の冷たさに眠れなくなる
みかんがおいしくなる
そして
あなたの命日が来る

マフラーをすっかり手繰り寄せて
毛糸の海の中にいる
身体に巻きつけるとミイラのように
ぐるぐる白くなる

わたしは あなたにてがみをかいた
鈎針で編んだこの白いマフラーは
秋を捨て冬を寄せたわたしの
思いが詰まっている


自由詩 冬を寄せる Copyright 竹節一二三 2003-12-09 02:26:35
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