ゆるやかにいきる
竹節一二三

ひるまに
今年はじめての
しろい息をふきだした
わたしの口は おそらく
しろい雲でおおわれていたことだろう

わたしは雲をうみ
そう ひつじのかたちをしたしろい雲を
ながめて
ながめながら
ほかのかたちをした雲を
このくちびるからうむ

くろい帽子と
しろいマフラー
それから
こげちゃいろのジャケットと
ふかいあおのジーパンをはいて
自転車で橋をこえる
わたしのあらい息はひとときもやすまず
雲をうみつづける
そう ひつじのかたちをしたくろい雲を

わたしはじぶんのふきだした
しろい雲のひつじから毛をかって
その毛を雨であらい
からからとつむぐ
そしてまた しろいマフラーの
つづきをあむ
時折くろい毛をまじえながら
まっすぐにあみつづける

たくさん息をふきだして
ながいマフラーをあみつかれて
とても疲れてベッドでやすんでいると
ゆるやかに空が雲におおわれて
くらくなった
見上げるとひつじたちがしろくろ入り乱れて
ひとつにとけこんでいる
わたしのマフラーみたい と
マフラーをからだにまきつけて
わたしは眠ることにした


いま雨がふっているのは
わたしがふきだした雲のせいかな
つめたい雨にこごえながら
しょぼしょぼと わらう
ひつじたちは夜にくろく染まり
あすの朝にはまたしろくろに戻っていることだろう
それまでわたしは朝の色をしたマフラーに
くるまり目を閉じた


自由詩 ゆるやかにいきる Copyright 竹節一二三 2003-12-12 02:31:08
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