指先と神様
竹節一二三

震える指先が凍りついて
いつか口に含んでも動かなくなったとき
幾度も自分を納得させる言葉を吐いた

私は人より多少不自由なだけ
壊れた右耳は機械の力で補える
動かない指先は動く片手で補える

それでも祈ったことがある

神様 ひとつだけ 叶えてください
毎晩 あなたに 祈りますから
ひとつだけ 願いを叶えてください
どうか すきなひとの 声だけは
この耳に 届かせてください

幼い願いは続いている
眠る前のひとつの習慣として
私は祈る
未だ誰の声も届かないけれど

それでも 祈ることがある

神様 まだ願いはかなっていませんけれども
もうひとつだけ お願いを聞いてください
どうか 好きな人の体温だけはこの指先に
感じることを許してください
眠りの浅いわたくしですが 眠っている時間中
あなたに祈りをささげますから

それではおやすみなさい


自由詩 指先と神様 Copyright 竹節一二三 2003-12-06 02:33:25
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