とにかく人殺しをやめさせなければいけない
室町

詩人がなにやら美徳をほのめかすような詩を書いているときは気をつけたほうがいい。
詩人が一見やさしそうに人倫をいつくしむポーズをみせているときは身構えた方がいい。
詩人がやたら仏教を持ち出したりツェランを語りだしたり「ポリティカルコレクトネス」
などと口にしはじめたら
気づかれないようにあとずさりして距離を置くことだ。

わたしは宮沢賢治があまり好きになれない。
あまりにも自意識過剰で演技的にすらみえる。
計算ずくな書き方に不快すら覚える。
「雨ニモマケズ」など読むと怖気が走る。
”そういうものにわたしはなりたい”と結ばれているのだけど
大店の質屋のボンボンらしい甘い幻想であり願望だ。
果たして賢治が農民の苦しみなどほんとうにわかっていたのか首をかしげる。
支配下にある農民を心配する良心的な領主の倫理が語られているようで
いまいち共感できない。

賢治の「永訣の朝」などもほんとうに作為的な詩でなぜにそこまで
ポーズをきめる必要があるのか首をかしげる。
瀕死の床にある妹がみぞれを食べたいなどといういかにもNHK朝ドラ的発言も疑わしい。
賢治がこれを書いたのが妹の死後半年たっている時期というがその頃には喪失の
哀しみも胸の底に沈み
記憶を対象化できたのだろうが妹の死の床にあった厳格でいかめしい家長の父が
そんなものを食べさせることに同意したのだろうか。
最後まで娘の回復を祈っていたに違いない。冷たいみぞれ雪など身体に毒だ。
わたしは賢治のこういうなんでも美的にドラマ化する傾向性。濃厚にそう疑われる性質が
どうも気にくわない。
それより賢治の死後本人の部屋の畳の下から淫猥なエロ画が何枚も出てきたというエピソードのほうが
人間らしくて気にいっている。
賢治は女性を避けたそうだが後年にはオナニーも悪くないといっている。それなら賢治は
そういう人間的な面をもっと表にだせばよかったのじゃなかろうか。
一番気に入らないのが戦争というこの世でもっとも邪悪な営みに絶対的な反対をしなか
ったところにある。
そういう意味では太平洋戦争中 戦争を煽った朝日新聞と当時の詩人たちもそうだが
詩人という人種それから新聞記者という人種はいつの世でも愚劣な戦争に加担している。
本人たちにはその自覚がないがいつも加担するのである。
戦中の報道機関と詩人の戦争に対する姿勢は今もまったく変わらない。

口先だけは戦争反対差別反対というが現在ウクライナ戦争を美化し
「先に侵略したのはロシアだ」という米国のプロバガンダに同調してこの一年半ウクライナ
ロシア両国の人々が死ぬことに目をつむってきた。
ロシアのプーチンを悪と決めつけ戦争集結を望むロシアの意向を報道しなかった。
NHKなどもっとひどい。「ウクライナはクラスター爆弾を正しく使っている」
こんなアナウンスをする。狂気の沙汰である。
それは朝日毎日をはじめとするウクライナの聖戦に加担する日本の主要メディアとそれに
腰巾着のようにくっついている詩人や批評家も同じだ。

おい! 死んでいるんだよ。人が。毎日毎日猛烈な数の人々が無意味に殺されているのだ。
だれが侵略しただのだれが正義の人だのそんなことはどうでもいい。
今すぐやめさせろ! いますぐ戦争をやめさせろ!
とにかくそう叫ぶべきだ。
わたしたち詩を書くものが最初にそして最後にいうべき言葉はそれだけだ。


散文(批評随筆小説等) とにかく人殺しをやめさせなければいけない Copyright 室町 2023-07-27 09:34:24
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