砂漠の行軍(八)
おぼろん

その一方で、ヨランは別のことを考えていた。すなわち、魔法素子について。
(魔法素子が生き物であれば、いつまでも大人しくしているものだろうか。
 魔導士ウィザムは魔法素子を自由に使う。それは訓練の賜物だ。
 ……しかし、魔法素子がその軛を離れるとしたら?)

(エランドルはもしや、今度こそ世界を滅ぼそうとしているのでは?)
ヨランはそうも思った。しかし、彼にはまだ人間的な気質が残っているようにも見える。
エランドルは何を望んでいるのだろうか? ライランテ大陸のさらなる混乱だろうか?
が、もしそうであれば彼の思いはすでに達成されたはず……

(エランドルは、いつかエインスベル様のことをククリスと呼んでいた。
 わたしは次元跳躍の瞬間、それをかすかに耳にしただけだが、
 エランドルが望んでいるのは、世界の改変ではないのか?)

エランドル・エゴリスという伝説上の存在は、たしかにいた。
そして、ヨランたち一行の目の前に立ちはだかっている、まるで彼らを試すように。
(この旅、本当にエインスベル様を救うことになるのだろうか?)一瞬の疑念にヨランは戸惑った。


自由詩 砂漠の行軍(八) Copyright おぼろん 2022-10-06 19:38:31
notebook Home 戻る  過去 未来
この文書は以下の文書グループに登録されています。
クールラントの詩