砂漠の行軍(九)
おぼろん

「おい、何をしている、盗賊。行くぞ!」
アイソニアの騎士が、重い背嚢を取り上げた。
それに従って、エイミノアも重い腰を上げる。
オーマルは、まるで人間ではないかのように平然としていた。

(ここは、アイソニアの騎士様にすべてを任せるしかないのかもしれない)
ヨランは思った。そして、自分が一介の盗賊に過ぎないことに、思いを致す。
(やれやれ、わたしが世界を滅ぼしてしまうなどと、大層なことを考えたものだ)
ヨランは苦笑した。そして、アイソニアの騎士の後を追う。

その時、オーマル・リケイディアは遠くを見晴るかすような目をしていた。
そのことに気づいたのは、オークであるエイミノアであった。
「ん? どうしたのだ、女。お前が見ている方向に何かがあるのか?」

「砂漠の切れ目です。クーゲンドルが見えてきました」……その言葉に、
一行は目をこらす。それは、淡い陽炎のようなものであった。しかし、
古代の言葉で言えば「摩天楼」のようなものが、そこには揺らぎながら見えていたのである。


自由詩 砂漠の行軍(九) Copyright おぼろん 2022-10-06 19:39:07
notebook Home 戻る  過去 未来
この文書は以下の文書グループに登録されています。
クールラントの詩