砂漠の行軍(七)
おぼろん

アイソニアの騎士の憤りも、もっともだった。
彼は、アースランテの千人隊長なのである。それが今では、
ヨランという盗賊風情と契約した身である。いかに、
エインスベルを救うための旅とは言え、彼は支配されることに我慢できなかったのある。

(この女……オーマル・リケイディア。我らをたばかっているのではあるまいな?)
アイソニアの騎士の疑いはもっともだったが、ヨランは女を信用しているようだった。
「おい、女。ここへ来るまでに、俺たちはいくつかの街を見た。
 それなのに、この世界の住人はなぜ、お前一人なのだ?」

「詳しいことは申せません。ですが、このハーレスケイドにある街は、
 古代世界の街をそのまま転移させたものなのです」
「古代世界の街? なんのために?」アイソニアの騎士は怪訝な表情になる。

「それも、今は申し上げられません。すべてはエランドル様の思いのままです」
「またエランドルか……。所詮は人間だろう? 俺が奴を葬ってやる。
 そして虹の魔法石を手に入れ、エインスベルを救うのだ」アイソニアの騎士は息まいた。


自由詩 砂漠の行軍(七) Copyright おぼろん 2022-10-06 19:37:36
notebook Home 戻る  過去 未来
この文書は以下の文書グループに登録されています。
クールラントの詩