砂漠の行軍(四)
おぼろん

砂の下から現れたシーゲンサが、一行を円で取り囲む。
先ほどのエビ・グレイムほど、シーゲンサは強力な敵ではない。
しかし、屠っても屠っても、シーゲンサは砂の中から現れた。
「きりがないな。こんな時にエインスベルがいたら……」

(彼女は、この魔物の群れを焼き払ったであろう。
 ヨランはすっかり怖気づいてしまい、魔法を使おうとしない。
 一体、奴は何を恐れているのか?)剣を振るいながら、アイソニアの騎士は考える。
「ええい、俺は戦いに生きる者。こんな雑魚どもに負けてたまるか!」

「わたしがあなたたちを手助けいたしましょう」口を開いたのは、オーマルだった。
「全てを眠りにつかせる呪文を。この呪文は、エビ・グレイムのような相手には通じません。
 しかし、このような下等な生き物相手であれば」──
 
青い光が、一行の周囲に立ち現れた。神々しい光。
「オーマル様? あなたはもしや、魔術師で?」ヨランが驚いて言った。
「いいえ、このハーレスケイドでは誰もが魔術を使えるのです」


自由詩 砂漠の行軍(四) Copyright おぼろん 2022-10-05 19:31:02
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