ハーレスケイドへの旅(二)
おぼろん

「まず、アイソニアの騎士殿。あなたは、わたしを疑ってはなりませぬ。
 この旅が世界を変える旅だと、エインスベル様を救う旅だと、
 そのことをお忘れなさいませんように。もし、それを忘れたならば、
 この世界には壊滅的な破壊が訪れる、そのことを誰もが心に留めておかなくてはなりませぬ」

アイソニアの騎士は息を呑んだが、ヨランの警告に対しては、
軽口で応えるのみだった。すなわち、「その減らず口、この旅が終わっても、
 依然として保持していられるのであろうな? お前の欺瞞がお前の信念を上回った時、
 容易にわたしはお前を裏切るであろう、盗賊ヨラン」と。

しかし、そんな言葉にも、盗賊ヨランは気色を変えないようであった。
白墨チョークを使って、ヨランは床に複雑な文様を描いてゆく。その様子に、
アイソニアの騎士もエイミノアも呆気に取られていた。

「もうじき済みます。これがハーレスケイドへの門です。わたしはあの時、
 暗視によって、我らが囚われていた牢獄の床を観察していたのです……」
アイソニアの騎士、エイミノア、そしてヨランが佇んでいる床に、一つの魔法陣が記された。


自由詩 ハーレスケイドへの旅(二) Copyright おぼろん 2022-08-20 16:43:45
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