ハーレスケイドへの旅(一)
おぼろん

白墨チョークを」と、盗賊ヨランは要望した。
その場にある誰も彼もが、と言っても、ここには三人しかいなかったが、
ヨランの唐突な物言いに、そして唐突な要望に戸惑った。
しかし、彼はそれに動じる気配もない。

「どうしたのですか? エイミノア様、アイソニアの騎士様。
 今になって、わたしの考えなしの行動に対して、
 否を言おうと言うのですか? わたしは愚か者です。
 そして、愚か者であるがこその、わたし自身に納得しております」

アイソニアの騎士は、憮然とした。このような何気ない物言いに対して、
その考えなしの振る舞いに対して、世界はそのあり様を変えようとしているのか、と。
しかし、それは意味のない問いであったと言って良いだろう。

「盗賊ヨラン。エインスベルの第一の従者。俺がお前を超えることは、
 今では叶うことのないものだったであろう。今では、この道化者こそが、
 誰よりも、世界にとって、彼女にとって、代えようのない役割を担っているのだと、俺は確信している」


自由詩 ハーレスケイドへの旅(一) Copyright おぼろん 2022-08-20 16:42:15
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