囚われのエインスベル(十一)
おぼろん

「仕方がない。お前を信用しよう」リグナロスはため息をついた。
彼とて、祭祀クーラスの謀略は知っている。
エインスベルには、もう時間的な猶予がないのだった。
「しかし、これは我の命にも関わることだ。慎重を期してくれるのだろうな?」

「それはもちろんでございます。脱出の直接的な手助けは、
 わたしどもがするでしょう」ヨラン・フィデリコも慎重に答える。
じっとりと汗のにじむような、沈黙が二人の間に訪れた。
「……ならば言う。この監獄には虹の結界が張られているのだ」

「虹の結界? それはどんなものでしょうか?」
これは盗賊ヨランも知らない種類の結界だった。通常の結界とどう違うのか?
リグナロスは言う。「虹の結界は、時間ごとにその様相を変える」

そして、魔導士の魔力を封じる力を持っている。
否、魔導士の魔力を食い尽くす力を持っていると言ってよいだろう。
「……それだからこそ、エインスベル様の身が心配なのだ」リグナロスは言葉を飲み込んだ。


自由詩 囚われのエインスベル(十一) Copyright おぼろん 2022-06-07 22:05:59
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