囚われのエインスベル(十)
おぼろん

「あなたがエインスベル様を助けるというのは、どうですか?
 リーリンディア監獄の秘密をお教えくださいませ」
落ち着き払った瞳をして、ヨラン・フィデリコが言う。
「秘密とは何か? 何をもって秘密と言うのか?」

リグナロス・アルテは明らかに動揺していた。
ヨラン・フィデリコは、鋭敏にそれを見抜く。
(やはり、この監獄には秘密があるのだ)
ヨラン・フィデリコは相手を探るようにして言った。

「この監獄からは、なぜ誰もが脱出できないのですか?
 何か、未知の結界でも張られているのでしょうか」
「エインスベル様の従僕ごときが、それを知ってどうするというのか?」

「もちろん、エインスベル様を脱出させます。
 それにはあなたの協力が不可欠なのです」
「うむ、エインスベル様には生き永らえてもらいたい。それが国のためだ……」


自由詩 囚われのエインスベル(十) Copyright おぼろん 2022-06-07 22:05:19
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