ファシブルの裏切り(七)
おぼろん

クールラントの軍団長、ラジーク・ユーゲルに異論はなかった。
ここで巻き返しておかなければ、アースランテの再攻が始まる。
そして、ファシブルの動向が気がかりだった。
ファシブルはさらに北進するのではないか。

クールラントの軍勢も、ラゴスの軍勢も、
その三分の一ほどは失われていた。
アースランテを追撃すれば、
全滅の危機もありうる。それは承知の上だった。

しかし、今はファシブルこそが脅威なのである。
戦いの命運を決するには、現場の判断を最優先するしかない。
ラジーク・ユーゲルは、重々しくうなづいた。

ラゴスの南部にいるアースランテの兵たちを駆逐しよう。
そして可能ならば、アースランテの北辺に侵攻する。
それは多分、祭祀クーラスの意向にも添うことだった……。


自由詩 ファシブルの裏切り(七) Copyright おぼろん 2022-05-16 04:52:43
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