ファシブルの裏切り(五)
おぼろん

「それは、非がファシブルにあるということか?」
ラゴスの軍団長である、カイザー・ネルが尋ねる。
ヒスフェル聖国の正魔導士、オスファハンは息を飲んだ。
「非、というのは何を持ってしておっしゃられるのでしょうか?」

「決まっている。戦いの決着に何をなしたかということだ」
カイザー・ネルが、あたりを伺う猛獣のような目で、周囲を見渡す。
「戦いの決着は、着いているのでしょうか?」
「当たり前だ。我が軍はこれから、アースランテへと侵攻する。

 その進軍に、友軍であるクールラントも必ずや助力してくれると、信じている」
ラゴスの軍団長、カイザー・ネルの言葉は重かった。
それだけ、ラゴスの兵力は疲弊していたのである。

「マリアノス・アリア・ガルデ、彼女は穏健派ではなかったのか?」
カイザー・ネルの側近の一人が呟く。それに対して、別の側近は答えた。
「逆に、元老院議員たちの奴隷となったと考えることも、出来るのです」と。


自由詩 ファシブルの裏切り(五) Copyright おぼろん 2022-05-15 13:55:46
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