ファシブルの裏切り(一)
おぼろん

誰もが予想外の事態が起こった。それをまだ、
アースランテの兵たちや、連合軍の兵たちは知らない。
アースランテの南隣の国、ファシブルが裏切ったのである。
その報は戦場には届いてはいない。

「さて、ヤロスよ。本軍は今後いかに行動すべきか?」
「ラゴス南部にいる友軍を集め、アースランテの北辺に陣を敷くべきです」
「さよう。わたしも同じ意見だ。本国の許可は後で取れば良い。しかし……」
ゴゴイス・リーゲは苦虫を嚙み潰したような顔で、言う。

そのゴゴイスにも、アースランテの本国が危機にさらされている、
という情報は伝わってはいなかった。すなわち、
ファシブルが、アースランテの南辺の地を制圧し始めたのである。

その連絡が伝わったのは、アースランテの軍が友軍と合流してから、
半日経ってのことだった。「まさか、いや、やはり……と言うべきなのか?」
ゴゴイス・リーゲのみならず、全ての者がそう思った。


自由詩 ファシブルの裏切り(一) Copyright おぼろん 2022-05-11 22:46:34
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