ファシブルの裏切り(二)
おぼろん

連合軍の兵士たちは、小隊ごとに軍団を再編成して、
ナハテ・ガルの砦へと戻っていった。
「これ以上アースランテを追撃してはなりますまい」
そう進言したのは、カイザー・ネルの側近ヤッホ・レスラントだった。

カイザー・ネルもそれに対して厳粛に頷く。
「窮した鼠は猫をも噛むと言うからな。敵がいかなる隠し玉を持っているか……」
「アースランテの強さは、その結束力です。
 もし、完全包囲の陣を敷かれていたら、我が軍は全滅していたでしょう」
 
レスラントの指摘はもっともだった。
アースランテは最善を目指して、最悪に陥ったのである。
そんな折、一頭の早馬が届いた。それはファシブルからのものであった。

「我が国はこれより、アースランテに対して宣戦布告する」
マリアノス・アリア・ガルデの親書である。
「なぜだ? なぜファシブルがこの戦に加わる?」カイザーは驚いた。


自由詩 ファシブルの裏切り(二) Copyright おぼろん 2022-05-12 22:53:28
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