ブルース・ブラザース、日本へゆく第一章 11
ジム・プリマス

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「どうだ兄弟。悪くないだろうがレガシィは。」ずれたブルース・ハットを被りなおして、ジェイクは葉巻に火をつけた。エルウッドは思わず、その煙にむせて、咳き込んでしまった。登場したジェイクは背中から白い羽がはえた天使の格好だったけど、煙は本物だったからだ。どうやら本物のそれも、かなり高級な葉巻を吸っているらしい。
「久しぶりに、お前とゆっくり話ができるぜエルウッド。死後の世界にはいろいろと制約があってな、話をしたいと思っても、俺たち天使が登場できるのは、せいぜい夢の中だ。だけど神が使わせたこのブルース・モビールの中ならしばらくの時間、現実の世界に滞在することはできることになってな。」
 ジェイクはまた葉巻をくわえて、うまそうに煙を吸い込んで、話をつづけた。
「そのお陰で、またこうして本物の葉巻が吸えるわけだ。いやー、久しぶりだぜ。」
 ジェイクは満足気に煙を吹く。
「死んでからはじめて分かるってことがある。日本って国は本当に侮れねーな、まったくアメリカに戦争をふっかけただけのことはあるぜ、エルウッド。」
一人合点しながらジェイクは喋り続けた。
「本当なら、死んでこのかた、俺がどうしていたか、最初から話してやることができりゃいいんだが、そして、死んだ俺がなんで、このばかげた羽の生えた、天使なんぞになって、お前の枕元に登場する羽目になったかについてもな。でも、それは神との約束で、できない事になっている。今回のミッションは神の御意思だか、その意味は、まだ人間のお前に、天使になっちまった俺が教えるわけにはいかないことになっていてな、その意味は、お前が実際に日本に行って、経験してみて、自分で掴むしかねえ。だけどな今度の日本行きは、驚きと、興奮と、感激に満ちたものになる。それだけはお前の兄貴として、俺が保障してやるぜ。」
 エルウッドはじりじりしながらジェイクが喋り終えるのをまっていたが、待ちきれずに言ってしまった。
「兄貴、話は走りながらでもいいかい。」
 ジェイクはイヒヒヒと笑いながら答えた。
「ああ、兄弟、久しぶりにシカゴの街をぶっ飛ばそうぜ。俺たちは神の使徒だ、遠慮はいらないぜ。」


散文(批評随筆小説等) ブルース・ブラザース、日本へゆく第一章 11 Copyright ジム・プリマス 2020-08-04 08:01:11
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