ブルース・ブラザース、日本へゆく第一章 10
ジム・プリマス

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「うーん、2.0リッターか。」と腕組みをしながらエルウッドは考えこんでいた。彼にとっては、もっと排気量の大きな、そしてトルクの大きなアメリカ車が望みだったのだけど兄貴やレイたちが予言したとおりの、神からの贈り物だ。けちをつける訳にもいかない。 
 エルウッドは車を汚さないように靴を脱いでボンネットの上に、慎重にのっかると運転席まで進んだ。ちゃんと運転席のウインドーは開いている。彼は器用にウインドーから身体を運転席にすべりこませた。四苦八苦しながら靴を無理やり履いてから、ふぅと一息ついた。
 思っていたよりもレガシィは小さい。運転席もこじんまりとした感じだが、身体を包み込むような一体感があって、乗ってみた感触は決して悪くない。内装もシンプルで日本車というよりはなんだかドイツの高級車みたいな感じだ。
 さて、いつものようにサンバイザーをさっとおろすと、ポロリと三角形のキーが手のひらに落ちてきた。「いいね、さすが兄貴。」と独り言を言いながらエルウッドがキーを差し込んでエンジンをかけるとセルが「シュル、シュル、シュル」と小気味よい音をたてて、回ったかと思うと、「ヒュルルルルル」と静かな音をたてて、エンジンが回り始めた。
 アクセルを空ぶかしするとジェット機のエンジンみたいな「キーン」という高い音をたてて、エンジンはスムーズに回り、タコメーターの針はレットゾーンまで一気に振れるけど、アクセルを戻すと、しばらくタイムラグがあってから針が元に戻る。エンジンの性能が良い証拠だ。
何度か空ぶかしを繰り返したけど、またエルウッドは腕組みをして考え始めた。
 うーん、うーん、悪くない、こりゃ確かに排気量はちょっと小さめだけど、まるで高性能の戦闘機のエンジンみたいだ。2.0リッターで二百馬力を超えるんだから、ツイン・スクロール・ターボとやらの性能は凄いぞ。得心したようにエルウッドはうん、うんと頷いていた。おまけにガソリンは満タンだ。これなら本当に言うことないや、とエルウッドがそう思った瞬間、金色の閃光と共に「ボン」と白煙が上がったと思ったら、助手席にジェイクが座って、こちらに向かってニカッと笑いかけていた。


散文(批評随筆小説等) ブルース・ブラザース、日本へゆく第一章 10 Copyright ジム・プリマス 2020-08-02 00:26:37
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