或る家で
墨晶

 
 誰かいる様な気がして ふすまを開けた

 隣の部屋は誰もいない

 更に隣の部屋のふすまを開けた

 そして また隣の部屋へ 隣の部屋へ

 どの部屋も 同じ様な部屋だ

 誰がいると良いのか

 誰もいないとわかるまで

 開け続けたら良いのか

 自らの畳を踏む音 ふすまを開ける音が

 部屋から部屋へ移動していく

 ふと 足を留める


「 もどるときは 今度は閉めながらもどるのだ
  
  不覚にも もう随分来てしまった
  
  面倒じゃないか ああ 」


 振り返ると

 開けてきたふすまの奥 元いた部屋が真っ暗だ


「 合わせ鏡を覗き込んでいる様だ 」


 遠く なにかが動いた様だった

 闇が ひと部屋 ひと部屋

 ゆっくりと

 こっちへ近づいて来るのがわかった
 
 
 


自由詩 或る家で Copyright 墨晶 2019-04-28 01:34:59
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