断崖と絶壁が
こたきひろし

空から落ちてくるのは
紛れなく男の体だった

地面に激突して壊れた
直ぐに回復して立ち上がった
立ち上がって歩きだすと一人の女が現れて微笑みながら進路に立ちはだかった

女は男の唇に自分の唇をかさねた
舌をいれて唾液を男の舌にからませた
それから口を離して
耳元に近づけて甘く囁いた
「痛かったでしょ?」
女は自分の乳房を男の胸におしてあてた
そして言った「あんたの好きにしていいよ」

俺は妻の体に背後から抱きついた
彼女は驚いて目を覚まし声をあげた
「止めてよあたしに触らないで!」
と言って怖い目で睨み付けてきた
「駄目なの?」俺は訊いた
「隣の部屋で娘たちが寝てるのよまた言われちゃうよ。お父さんとお母さん夜中に煩いよ。二人ともいい年なんだからそういうの止めてよ」って


自由詩 断崖と絶壁が Copyright こたきひろし 2019-04-19 07:10:49
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