塊根
飯炊き女

あの日
私はすべてを奪われた
気づかなかった
ただ必死に考えていた

考えるほど深みにはまった
逃げなかった
ただ必死に付いていった

黒く染まりそうになった
私は抗った
守るものがあったから

しかしそれは去っていった
原因はわたし
そしてすべてを失った

悪いのはわたし
取り返しはつかない
大切な人を傷つけた

わたしが母でなければ
わたしが妻でなければ
わたしがわたしでなければ

子らは去らなかった
男はだれかと生きていた
わたしはそれを知らなかった

わたしがいなければ
わたしがわたしでなければ
彼らはいなかった

わたしがわたしだったから
生み出した命と感情は
わたしが作り上げたもの

あの日
理不尽な出来事で
わたしはすべてを奪われたと思っていた
穢されたと思っていた

いま
わたしは
奪ったのはわたし自身だったのではないかと
そう思う

私の名前は飯炊き女



自由詩 塊根 Copyright 飯炊き女 2019-01-14 12:29:57
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