荒野に針路を取れ
平瀬たかのり

 映画を観てのことばは
 批評や感想ではなく
 あくまで実作において
 綴らなければならない

 実作すなわち脚本、そこに
 書くことの時間全てを当てよう
 カタルシスの意味において
 きっとそれはいっそうな苦闘だけれど

 目の前に果てなく広がる闇、そこは
 お金も時間も若さも才能も機会も
 ぼくよりふんだんにあるひとびとが
 さまよい歩いている荒野だ
 だからぼくは一歩を踏み出せず
 慄いたままでいた

 けれど決意の時はふいにやってくる
 それはいつもの朝だったりする
 「いくら落ちたってイノチまで取られるわけじゃない」
 ひとあし、ひとあし、ペダルを強く踏み込む
 向かい風が立ちこぎをふらつかせる

 だから詩よ
 いつだって愛憎半ばしたおまえよ
 今、とりあえずのさようならだ
 けれどわがままなお願いだ
 詩よ
 題名に、ト書きに、台詞に、人物名に
 しとやかな雨となりふりそそぎ続けてくれ
 暗い荒野を歩くぼくの
 一条の灯りとなり足下を照らし続けてくれ
 ずっと、ずっと

   (タイトル=イースタン・ユースの同名曲より)


自由詩 荒野に針路を取れ Copyright 平瀬たかのり 2015-06-19 13:09:14
notebook Home 戻る  過去 未来