空
itukamitaniji
空
誰かの笑い声が聞こえる 僕は壇上に立ちつくしたまんま
何か気の利いたことを 言わなきゃって心の中を探すけど
そんなもの最初っからなかったんだ 分かっていたんだ
僕の右往左往する様を見て また誰かの笑い声が響いた
そしてまたいつも通り 力なくバスのシートに体を預けて
左隣の一人分の空席を ぼんやりと眺めながら思う
今はあの時吐いた言葉さえ 夢だったらと願ってしまっている
あんなに長く悩みぬいて 強く守っていた言葉だったのに
何にも嫌いになんかなっていないのに まるでそんな風に
世界は僕を仕立て上げようとする 黒か白かなんて
そんな極端な答えしか 用意することしかできない僕は
自分を否定してしまうことでしか 前に進めないみたいだ
そしてまたいつも通り 力なくバスのシートに倒れこんだ
君が隣にいたのなら どんなこと話すんだろうなって
誰かが悪いわけじゃなくて 狂っているのはきっと世界だ
だけどそんな世界で僕は生きている ならば全てを僕が引き受けるよ
誰かの励ましなんて聞きたくなくて
僕は耳をふさいでしまった
そしたら何にも聞こえなくなってしまったんだ
君の声がどんなだったっけって
何も聞こえなくなった空席を ぼんやりと眺めながら思う
今はあの時吐いた言葉さえ 忘れ去ってしまえたらと願っている
あんなに長く悩みぬいて 強く守っていた言葉だったのに
とても素敵な言葉だったのに 言わなきゃよかったなって
そんな風に思ってしまう 自分が大嫌いなんだ
自由詩
空
Copyright
itukamitaniji
2014-10-31 22:54:41