オルガン教室
蒼木りん

さむいふゆの日

ちいさな水たまりにはった氷の

スケートリンク

滑りながら待っていた

幼稚園の教会オルガン教室

それは楽しそう

だって幼なじみさんにんで

オルガン習う

お母さんといっしょに

帰れる

格子のコート着たお母さん

お母さんはお母さんの顔

ゆう子ちゃんもゆりちゃんもやめたけど

お母さんはいらなくなっても

わたしひとりで通ったよ

めんどうだったけど

火曜日にはレッスンバッグもって

ピアノはいい音ね

毛穴からしみこむみたい

せんせい

わたしのことすき?

せんせいはせんせいの顔

オルガンは息をしないと

死んじゃうの

わたしはぱこぱこ踏む

死んでも通いつづけたとおもう

教会のオルガン教室

最後の晩餐の絵

葡萄のパンの話

お母さんが

やめたっていわなければ

もう

一回聴いただけで

弾けたのに

ウォルフガングとベートーベンの肖像画と

わたしの脳みその目が開いた

グレーのバッグにト音記号

思い出は冬の灰色の空

夏はゆみちゃんの茶色の髪とスカート

駄菓子屋の煉りあめ

小学校に行く日もさむくて灰色

みんなきらい

灰色はさむいきらい

いま

まねごと

幼稚園生にもどってる




未詩・独白 オルガン教室 Copyright 蒼木りん 2005-01-29 10:37:37
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