石を投げたら土をかけろ
木屋 亞万

どれだけもっともらしい言葉を吐いても
お前らは何も語っちゃいない

目に映るものすべてが腐って見える
狂ったように照り付ける日差しも
鉄板になったアスファルトも
粉塵を巻き上げて走る乗用車も
わずかな街路樹に集団で鳴き喚く蝉も
不気味に増殖した遠方の入道雲も

涼しい安全地帯にいるみなさんお元気ですか
お前らはお元気でしょうね

何を描写しても
どんな感情を言葉にしても
お前らの言葉はすべて
手垢のつきまくった古びた言葉だ
カビが生えて腐っている
称賛も罵倒も意味をなさない
攻撃も擁護も本質には届かず
虚しく空を切るだけ
お前らが交わしてるのは会話じゃない
鳴き喚く蝉と変わらない
わかりあっているのではない
息継ぎがうまくかみ合ってるだけだ

青空に立ち込める暗雲
突然降りだす雨
濡れても未だ暑いまま
振り返っても
見たいものはひとつも見えない
記憶の中が腐っていく
思い出の詰まった瓶に
生えていくカビは
瞬く間に広がって
こそいでもこそいでも
腐ってしまうんだ

もう手遅れだ
元々薄汚れた過去だった
殺菌しても除菌しても
臭い物にした蓋は
二度と開けられないまま
瓶ごと捨てる決意を迫る

次はもう助けないだなんて
そんな
今回だって助けなくて良い
出口へ急ぐ者の肩を
無理やり掴んで止めたくせに
説得するのは今回だけだと怒鳴る
帰りたい奴は地に帰ればいい

どこかで聞いたことのある
見たことのあるものばかり
そんな愚物に喜ぶものは
汚れを知らぬ小さな子どもと
記憶も蓄積もない凡愚ばかり
やがて彼らも腐った言葉に
口も耳もふさがれるのだ
聞こえるのは栓から漏れ出る
嗚咽まじりのうめき声

どれだけもっともらしい言葉を吐いても
お前らは何も語っちゃいない

じゃあどうすればいい
どこを治せばいい
何を学ぶ必要がある
美を見つめる眼鏡はどこだ
世界に触れるための手を
骨折してしまった馬鹿に
まだ治る余地はあるのか

私はまだ甘美な
桜桃の味を知らない
舌は渇き
胃は飢えている
だけどしばらく
ひとりにしてくれ


自由詩 石を投げたら土をかけろ Copyright 木屋 亞万 2014-08-07 00:31:17
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