空卵
木屋 亞万

紙飛行機がララララ
ファルセットを響かせて
離陸していくその数は
およそ無量大数を越えて

どんなカメラなら
星の小さな輝きを写せるのだろう
消えそうな白いシャツの向こうに
見えない体を持っている
乙女がわらわら幾人も
雲の向こうで泣いている

決まりきった人たちが
改札を過ぎていくのに
汚い男が近づけば
不機嫌に閉じようとする
私は持っているよ
通り過ぎるために必要なものを

ピアノの死体を組み敷いた
線路の上をガタンゴトン
パーカッションはメロディに
出会えないまま駅に着き
ため息をつき
またガタンゴトン

誰かのものになった
ような気がした全てのものは
誰のものでもないままで
私のものになった
ような気がした全てのものは
唯そこに在るだけだった

虚しさは空洞をもったまま
完結している卵の殻で
そこに何かを入れようと
すればするほど壊れていくの
最初は綺麗に閉じていたのに

空の卵を見つけたら
殻を全く壊さずに
君の全てをそこへ注いで
歌のように心地よい
ぬくもりのある君が良い


自由詩 空卵 Copyright 木屋 亞万 2014-06-23 00:40:23
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