ため息の雨
木屋 亞万

細長いため息を吐けば
雨になって壁に突き刺さる

仮面を剥いでも
表皮が乾いた途端また
次の仮面が顔を覆う

背中に羽根が生えたせいで
バランスが取りづらい
かさばって満員電車で邪魔になる
精一杯広げてみても
滑空するのが関の山

目から涙が流れれば
潤う頬もあるだろうに
涙腺が枯れ
砂漠化が進み
熱を持つ頬
筋肉が熱で硬直し
自然に笑うことができない

ため息はいつも雨になる
ずぶ濡れのマスクをつけて
下を向いて歩く

目から流れれば良かったのに
一度配線を間違えたら
もう取り返しがつかない

泣いてもいいですか
男の子だけど
悲しみを捉えきれずにいるけれど
鳴いていいですか
うまく吠えられないんです

ああ
いつも
息だけが
濡れて
声にならない
言葉が出ない


自由詩 ため息の雨 Copyright 木屋 亞万 2014-08-31 19:24:48
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