桜/きっとそうするしかなかったのだろう
rabbitfighter

高戸橋から江戸川橋の間
神田川は桜に抱かれている

護岸に並んだ二百数十本の幹から
幾千の枝が
それらの枝はその幹の根よりも低く
深く
川面を抱きしめる

ビルとビルに挟まれた都心の川岸で
きっとそうするしかなかったのだろう

今日、花は八分咲きで
これから満開になりそして散る

流れる花びらを見ながらかつて思っていたことは
もう忘れた

今は
癒えることのない悲しみを知ってしまったから

神田川はやがて隅田川に注ぎ
全ての川と同じように海へと還る

あの海へと

散っていった花びらたちが
共に還るのか私は知らない

何れにせよ

きっとそうするしかなかったのだろう


自由詩 桜/きっとそうするしかなかったのだろう Copyright rabbitfighter 2014-03-30 01:55:39
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