アイフォンを手にしながら
番田 


くたびれた体で
僕はどこにいくことができるのだろうと思う 夕暮れ
僕のアイフォンの中から
今日も聞こえる音楽は家入レオだった


もうこんな歌 すでに
聴く歳ではないのだが 聴いていたのは なぜだろう
そして 電車に座れば 隣に座る人は よくわからないし
すでに存在しなかった


そして部屋の中には
カートコバーンの大きなポスターが張られている
しがないサラリーマンに
それはあまり似合わないのかもしれないと思う


その昔失業中に立ち寄ったことがある記憶のある
新日本橋のちらしずしのお店に
ランチを食べに行く そんなことは 今の僕には
不可能な話で


でも あの店はまだ
冷たい海辺に建っているのだろう そして きっと
僕は松屋で性懲りもなく
安いカレーを また今日も急いで食べるのだろう


先客の女の子がいた 必死で 卵と それと
牛丼のようなものを 必死で
胃の中にかきこんでいた きっとそれは今まで見た中で
一番寂しくて悲しい光景


貯金をするための
僕の松屋での通算食事回数を考える
冬の暗闇の曲がり角は 何もない きっとこの職場は
恐らく僕の描く理想の場所とはほとんど無関係だった


生きる時間を無駄にするだけなのだと思い 猫の体に触れる時
鉄の仮面のような目をしている僕


自由詩 アイフォンを手にしながら Copyright 番田  2013-12-18 02:05:36
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