新宿を歩くサラリーマン
番田 


僕は今日も
冷たい風の中を歩くだろう
すれ違う人の冷たい目線にさらされながら
この腕を振って歩くさ
手には一冊の本を抱えて


だけど眠いだけ 友達は皆
結婚した
もう半年ほど
仲間と呼べる人とは僕は会っていない
多分皆そうなってしまうのさ


気づいたら一人で
一人ぼっちでカラオケに行き 歌うべき曲も
いつしかそこからなくなって 一粒の涙が
タッチパネルに零れ落ちて
そして明日からまた同じ日常が始まる


同じ日常が始まる やがて
会計する時の列で
僕と同じように 安っぽい身なりで
一人で今日も歌いに来ている女の子の横顔
君の中にもその涙が見えた


かつて愛で溢れていた頃があった
そんな言葉で始まった悲しい詩を読んだ
雨の日の仕事場の休憩中


目は文字をたどった
緊迫する一分間の時の中で
言葉の中を子供が駆けていくように


自由詩 新宿を歩くサラリーマン Copyright 番田  2013-12-17 01:23:13
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