僕の街とAKB
番田 

公園へ向かう冬の夕暮れ。いつも思い出のようなものを胸に、通いなれた小さな繁華街を通り過ぎていく。美容院の人の顔を思い出しながら。角の果物屋にはもう、梨やスイカの姿はなかった。それは、りんごやみかんの姿に変わっていた。春になったら、どんな果物が並ぶのだろう。そんなことを考えていた。今日の風は冷たかった。死ぬときもきっと、こういった冷たさが全身を襲うことだろう。百円ショップの入り口のワゴンに載せてあるものを見た。そして門の前に出されている、服やガラクタを物色する。そこに、寒さに負けずに咲いている小さな花。そういえば今年は栗ご飯を食べなかった。ふいに前を歩いている下着のようなフリルをのぞかせている子を見た。僕が追い越していく時、ゴシックロリータ風の魅惑的な横顔を銀行のATMに映えさせていた。そうわからされた街で、コーヒーと、それから、それに入れる砂糖と、ツタヤではアダルトビデオを借りてこようかと思っていた。そして年末は、何もする予定がなかった。そして、誰に会うこともなく、またルーチンワークがはじまるのだろう。それについて、もう、何も思うことはない。また、肌寒い公園のベンチに腰を下ろし、ダンスの練習をする女の子の集団を見つめていた。僕の手にはコンビニで手に入れたホットドック。だけどケチャップが指に絡みついて、傷口にしみた。今自分の体は肉体のない骨そのものなのかもしれない。いつもそう思わされるAKBの握手会はどんな服を着て行こう。でもこの間は券を手に入れるためにCDを何枚も買った。そして余ったものはブックオフですぐに処分した。握手をして、その体温や汗を心から感じて、それでまあ、次の日から明るい毎日が始まるというわけでもないが、そういう輩はまわりに何人もいる。でも、AKBは当日は一体どんな気持ちで会場入りするのだろう。そして彼女らは一体どういった面持ちでオーディションを受けてデビューしたのだろうか。そんなことを考えていた。彼女らの母はそこで、娘をどんな気持ちで会場へと送り出すのだろう。もちろん、もうすでに一人暮らしをしているような子も中にはいるのだろう。けれど、夜眠るときにだけどこんな僕があの子の生活の役に少しでも役に立てたらいいなと強く思っている。だから、僕は、チオビタと、通の手紙を彼女に手渡そうと考えていた。手紙には、僕の精魂こめて書いた詩が一つ。僕のことを忘れないでほしいといった言葉を、応援の気持ちの一つとして、そこに並べ立てようかと考えている。


散文(批評随筆小説等) 僕の街とAKB Copyright 番田  2013-12-15 17:02:00
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