夕餉
梅昆布茶

今日もあせをかいて老母と
子供たちと彼女のあしたのかてを用意する
支払いが間に合わないことなんてたいしたことじゃないさ

金星はゆうゆうと太陽面を通過して
菊地直子もつかまった
消費税も上がるだろう

世界はひとつの結論で快適に倒置されて
僕の部屋の懐かしい乱雑さも
荘厳に維持されてゆく

なんて悲しい夕暮れだろう

もうラッパを吹いたとーふ屋のおじさんはいない

びっこの犬が長いかげをひきずって
原子炉の建屋とのっぺらぼうの海岸線のあたりを彷徨っている

H.G.ウェルズが想像のなかで描いた太陽の終焉と
暮れかけた赤黒い風景のなかでうごめく異形の生命のように
なにかに支配されてねむるような足取りで

僕はこの悲しい混沌を整理したかった
そして敬虔な異教徒の夕餉を

血だけがつながっている
あるいは血さえもつながっていない家族たちと

ともにしたかっただけなのだ


自由詩 夕餉 Copyright 梅昆布茶 2012-06-07 22:02:17
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