冷奴
たもつ

 
 
明方の台所で
豆腐がひとり
脱皮をしていた
家の者を起こさなように
静かに皮を脱いでいた

すべてを終えると
皮を丁寧に畳み
生ごみのところに捨て
冷蔵庫に入った

夕食は冷奴だった
僕は明方に見た
豆腐の脱皮の光景を
妻に話した

何、それ
と言って妻は笑った

豆腐も笑った
 
 


自由詩 冷奴 Copyright たもつ 2012-05-21 18:48:07
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