【 闇の音 】
泡沫恋歌

硝子窓の向こう側
暗闇の中で
蜉蝣の透明な翅が
月の雫のように光っている

―― ヤミガコワイ……

呟き声がした
わずかな物音まで
深い闇に吸い込まれていく

一枚の硝子に仕切られた
闇と光 陰と陽 死と生
見えない掌が掴もうとしている

禍々しい魔物
闇があなたを連れて行かないように
わたしは窓辺に立って
拒絶の背中で楯をつくり
闇からあなたを守っている


硝子窓の向こう側
大きな蛾が
幾度も硝子に打つかって
白い燐粉を撒き散らす

―― コドクガツライ……

あなたの溜息に
痺れるように瞼を閉じれば
未完成な魂が震えだす

一枚の硝子に仕切られた
喜と悲 幸と不幸 希望と絶望
連なり合った対極

深い闇の中で
あなたの指がそっと頬に触れた
覚悟を決めた人生があるのです
ふたり抱き合って
闇の音を聴いている



自由詩 【 闇の音 】 Copyright 泡沫恋歌 2011-09-28 21:15:24
notebook Home 戻る  過去 未来