木屋 亞万

たいらかな午後に
芽吹くひとつの種
照りつける日差しの中
渇いた土から首をもたげる
開きたての二葉は
まだしっとりと濡れている

いつぞやの種が
気がつけばすくすくと育ち
次の種を生み落としている
なんという午後だ
太陽がもう折り返している
昼は下がり始めが一番あつい

まばたきのたび夢を見る
暗闇から声が聞こえる
はらわたの中で
誕生の歌を唱えている
私の中の種が
あの人を呼んでいる

夕方には雨になるらしい
種がすべて生き残るわけではない
でも今日はまだここにある
誰にも奪われず
すくすくと育っている


自由詩Copyright 木屋 亞万 2011-06-24 01:52:25
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