こうえんこう
木屋 亞万

公園に行く午後
テレビは何も歌わない
単なる網戸越しの騒音で
ふっと
人の気配が途絶える
午後二時過ぎの無人地帯

公園でボール遊びをしないでください
公園で犬を散歩させないでください
公園で花火をしないでください
公園の芝生に入らないでください
公園にゴミを捨てないでください
公園で騒がないでください

じゃあ何をすればいい?

ベンチに座って
スカートの裾を切る
もう長く戻すことはできない
文房具のハサミは切れ味が悪く
ぐにゃぐにゃと切断された布を
ゴミ箱に捨てて
靴も捨てて
教科書も捨てて

裸足に
空っぽの鞄を持って

すこしずつ捨てて
すべては捨てないで

選択肢のような顔で
こちらを見ている
死を無視して

軽くなっていく
わずかに足が
地面から
離れていく

人間が人間であろうと
すればするほど
つまらない
もうやめます
さよなら

あたらしい私は
自分をもたない
人間ではない
生き物かどうかも疑わしい
かたまりですらない
ありとあらゆるものと同じで
平凡で
何ものにも縛られない
自由という言葉すら重い

そんなとらえどころのない
あたらしい私は

ルールだらけの公園で
うだうだ時間を潰していた
あのときと

結局
何ひとつ
変わってはいないのだ


自由詩 こうえんこう Copyright 木屋 亞万 2011-05-28 02:31:36
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