radiating pain
木屋 亞万

ボールを受けるときは胸の前でと
習っていたのがこんなところで
しゃしゃり出たのか、弾丸は
胸のど真ん中へぶっ刺さる

貫通した方がケガの治りは早いのだろうが
今はこの身体の中で全ての敵意を受け止めなければ
動く壁と呼ばれる様なプロではないが、君のため
動く板くらいにはなれたら良いと思う

肋骨の隙間を縫って
明らかに弾は心を破壊している
体内を放射状に痛みが拡がり
身体が核心から破裂していく

弁慶のように勇ましく仁王立ちとは行かないが
呻きながら足を震わせながら失禁しながら
背中の向こうで震えている君を感じて
歯を食いしばる

わき腹と肩と太股にさらに被弾し
もう今は拳銃のサンドバックと化している身体
最初に喰らった一発の痛みに比べれば痛くない
いやしかし痛い

口から血を吐き出す
体内が血液で満ちている
元々血のないところにまで
血がたぷたぷと巡っているのだ

弓矢と銃弾ならどちらが痛かったろう
痛み比べなど御免だが
もはや立っているのも楽ではない
背中で震えて泣いている君もさぞかし辛かろう
長い目で見て一番つらい状況にあるのは君だ

心臓から送りだせなくなった血液の代わりに
血管は痛みを全身に循環させていく
手足が痺れて視界は白黒にチリチリと燃える
唾液と混じりとろりとした血液が口から垂れる

最後に額の真ん中に銃弾を受けて
頭脳はぐちゅぐちゅと潰れて
そっと悟るように命を落とした

世界よ平和であれ
もう誰一人
恐怖で震えさせてはならない


自由詩 radiating pain Copyright 木屋 亞万 2011-04-22 21:39:47
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