いと
佐々宝砂
赤ちゃんがあまり泣くから頭が痛くなってしまって
鎮痛剤を2錠飲んだのだけれど治らなくて
もう2錠飲んだらついうっかり眠ってしまったの
目をさますと 部屋中に片づけてない洗濯物
たっぷりウンコのおむつのにおい
流しにあふれる汚れた食器
そんな手のつけようもない部屋に坐りこむ
ボサボサ髪にノーメイクのわたし
ああ 泣きたい
どうしたらいいのかわからない
助けてください どうしたらいいか教えてください
すると すい と 糸がおりてきたの
銀色の糸 ほそいけれどきっぱりした糸
ああこれがわたしの命綱なのだと思ったら
すいすいと身体が動いたのよ
それでね 部屋も片づいたしお料理も完璧
赤ちゃんもすやすやと眠ってくれたのすてきでしょう
だから今夜は薄化粧してヘアスタイルも変えてみた
そのせいかしら
あなたがいつもと違ってわたしとおしゃべりしてくれるのは?
これからわたしたちきっと幸せになるわ
ええ わたし嬉しいのよ あなたと同じになれたのだもの
あなたの手足から天に向かってのびているその銀色の糸
あなたを操りあなたを動かすきっぱりした糸
それをわたしも手に入れたのよ
自由詩
いと
Copyright
佐々宝砂
2004-10-15 23:07:54