ありふれた雨の日
itukamitaniji

ありふれた雨の日


今朝は雨が降っているから 電車が遅れるかもって
傘を握って 慌てて走って道を急いだんだ
いつもの交差点は まるでたくさんの花が
水を滴らせながら 咲いているみたいに見えた





ホームはまるで戦場 車内はまるで押し競饅頭
それはまるで この世界の縮図みたいに
誰もが自分の存在を 守るように踏ん張って
それに負けじと 毎日僕も抵抗するんだ





道端に置かれた段ボール 中から子猫が顔を出す
可愛がってやってください 書くなら捨てるなよと
雨に震える小さな姿に ちょっと心が痛んで
さしていた傘を 差し出してあげたのだった





僕ら探している 自分がここに居る意味は
ベルトコンベアーを 抜けた先にあるらしい
何処に行こうが 平等に雨が降ると言うから
小さい傘に僕ら 寄り添って未来へと歩いた





時には虹に架かったり 何処かで思いがけない
景色なんかに 出会えたりするんだろう
段ボールの猫は 夕方には居なくなっていた
目指す場所に そんな綺麗な物があるのかな





今朝は雨が降っていて 電車が遅れるかもって
傘を握って 慌てて飛び出してきたんだが
夕方になって すっかり晴れて見事な空
置いてきた傘のこと なんてすっかり忘れて

少し歩いて帰ろうか なんて思ったんだ

そんなもんで良いのかな
そんな風で良いのかな…


自由詩 ありふれた雨の日 Copyright itukamitaniji 2010-07-05 00:17:25
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