藍集
あおば

               100426





ヤバイというよりも
お些末
こまったちゃんですこと
(炬燵の中野駅は途方に暮れる)
(納戸も悔やむが好いと)
(物置が羨むから)
(壊れた物も)
(修理して)
(ピカピカに磨き)
(箱に入れて)
(仕舞うのです)
(それが)
(正しいやり方だと思って)
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6AR5真空管の脚を
洗いざらしの木綿布で
こしゅこしゅ擦っていたら
柔らかい脚が
くにゃりと曲がる
曲がり易いのだから
曲がったときは
正しく矯正しましょうと
爪の先で曲がりを直す
そのつもりだったのです
(真っ直ぐになったはずです
 専用の矯正道具を用いるべきでした
 べきでした
 冪乗の特性でした
 巾ともいいます
 ベキ
   ベキっといいながら羽目板を直す
   ベキっといいながら羽子板を打つ
   羽根の音に正月を込めるはずでした)
ベキっと音がして
割れるのが正しいのです
ピチッと音がしてして
真空管の根本が割れた
瞬間接着剤を冷蔵庫で探し
割れたところに塗りたくり
元通りにしてみたが
みてくれはだいたい同じ
空気も透明なので
見た目は変わりません
接着したところは目立たない箇所です
とはいうものの
真空管が
空気管になって
本来の機能は果たせない
気分だけは元通り
ベキっといいながら
見直してみたら
銀色の鏡のようなマクネシュームのゲッターが
空気を吸い込んで白く変色していて半透明になっている
見てくれも変わった!
これでは誰が見ても
空気管だ
元真空管6AR5
現空気管6AR5が
生き返って
真空に戻ることができるだろうか
バレた
ヤバイ作業の果てに
バレた
すぐにロケットに乗り込んで
藍色の漂う遥か成層圏を越え
宇宙ステーションの漂う辺りで接着すれば好かったのだと
いまさらに思う
思っただけでは実現しないが
可能性のあることは検討に値する
ベキっと音がして
一舜で見当識を失って
冪乗の果てのガラス製の容器は考える
考えながらも
銀色の鏡を失って呆然としながらも
外観は元通りを維持して
平気な顔を装っている元6AR5真空管

ベキっと音がして
ピチッと割れた
藍の冪乗色が放射され
どこかで空の下に収斂して
7色の虹となると
無器用な男は考えたりして
冪乗の無責任、
ベキベキとまだ言っている







「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作。タイトルは、黒葉かものさん。



自由詩 藍集 Copyright あおば 2010-04-27 00:04:05
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