ハミハ
木屋 亞万

緑色のハーブと
青いミントと
白いハッカ、

もしも喧嘩をしていたら、まとめて全部食べてしまえばいい

森林の葉のざわめき、
溶解する葉の表皮
舌の芯を刺す葉緑体の化学変化

海洋の波のさざめき、
絶え間なく押し寄せる波
弾けるあぶくが広がり冷却

白雲と風のゆらめき、
極小の水滴の群れと偏西風
流されていく膨らみの中に雷鳴

コップに注がれた発泡水から
湧き出る気泡は最初ほど元気ではなくなってきている
三つ巴の戦いは口の中でも続く
この騒ぎを止めるのは
女神の口づけ以外にない

私と女神の口が触れ合うとき
口の中の固形物はすべて融けてしまって
甘い唾液が行き来する
女神の髪が私の顔にかかって
時折もれる鼻息が爽やかな風となる

それが喧嘩でも戦争でも諍いでも
何であったとしても、すべて
呑み込んでしまえばいい
あらゆる危険と暴力を口に入れた状態で
快楽に身をとろけさせてしまえばいい

肌はいくら露出しても死なないが
血を流しすぎたならば人は死んでしまう

凝固した透明が融けてなくなったら
気の抜けた炭酸水を飲もう
私の肺が鍾乳洞になってしまっていたとしても
女神が石膏の像となり、手がもがれていたとしても
決して涙は流さない、漏らすのは絶頂の声だけ


自由詩 ハミハ Copyright 木屋 亞万 2010-03-05 02:28:35
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