あちらのお客様からです
クローバー

あちらのお客様からです
と言われ、差し出されたものを見れば
それは見事な、ヒトデ
ごつごつして、海水まみれで、
こんなものくれるくらいなら、タオルもつけてくれよ
と、あちらのお客様を、にらみつけたり
したら、せっかくくれたのに、申し訳ない気もして
結局、目をそらせてしまう。
わからないままにして、ほおっておいてもいいものは
そんなにたくさんはなかったはずなのに
僕らはそうやって、せいいっぱい忘れたふりをして過ごす。
それじゃ、マスター僕からはこれを。
と、クラゲをポケットから出して、手渡した。

きっと、空の高いところでは
海に落ちて帰ってこない、月や星を探して
オリオンあたりが、困った顔をしているだろう。

あちらのお客様からです。
と言われ、差し出されるクラゲを
君は、なんと言うこともなく
ヒトデが入っていたであろう小さな水槽に入れた。


自由詩 あちらのお客様からです Copyright クローバー 2010-02-14 22:02:05
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